免疫細胞は、超エリートなんですね。(管理人)朝日新聞の医療サイト アピタル 2013年4月13日 より
いまだに話題に上ることも多い日本のゆとり教育。
どちらかというと批判の方が多い気がするけれど、そんなゆとり世代のカラダの中にも、およそゆとりとは言えない厳しい選別システムが存在している。

その厳しい選別の目的は、優秀な免疫細胞を選び抜くこと。
免疫細胞とは、細菌やウイルスなど外界の物質から自分自身を守る役割を持った細胞のこと。
そのためには、攻撃をしかける免疫細胞が自分自身の細胞と外から侵入して来たものをきちんと区別できなくてはいけない。
そのために試験を課し、選別するのだ。

免疫細胞には色々なタイプの細胞がいるのだけど、今日はT細胞についてお話しよう。彼らは時には指令塔、時には実行班となって活躍してくれるとても重要な細胞だ。

ちょうど胸の真ん中に、胸骨と呼ばれる大きな骨がある。
その骨の体内側に「胸腺」とよばれる器官があり、ここがT細胞選別のための試験会場となっている。

成熟したT細胞になるために、たくさんの未熟なT細胞見習い達がこの選抜試験を受けに胸腺にやってくる。
試験内容はとてもシンプル。
自分自身の細胞をきちんと「自分だ」と認識できるか。

もしも「これは自分自身の細胞だよ」というサインを見過ごしてしまったら?
不合格。死ぬ訳ではないが、次のステップには進めない。

自分自身の細胞だと気付いて、つい「これ!これです!これ自分の細胞です!見失わないようにガッチリつかまえておきます!!!」と意気込みすぎてしまったら?
「自分自身を攻撃するかもしれない危険細胞」とみなされ、不合格の上強制的に死へ追いやられる。
やる気がありすぎるのもダメなのだ。

ではどんな細胞が合格するんだろう?
それは「これは自分の細胞ですね」と冷静に認識できる細胞だけ。
反応が弱すぎても、強すぎてもいけない。
その感覚を理解できる細胞のみが、胸腺を去って全身を巡ることを許される。

合格率はたったの1~5%。
胸腺にたどりついたT細胞見習い達のうち、実に95%以上の細胞がここで脱落するんだ。
合格率1~5%って相当難しい試験だよね。
そして私たちの世界と違うのは不合格となれば死が待っているということ。
まさに命がけの、厳しい世界なんだよ。

でも、厳しい選別をくぐり抜けたT細胞達は一生涯に渡って私たちを外界の敵から守ってくれる。
私たちは、命がけの試験をくぐり抜けた超エリート達に守られているんだ。

不合格=死を意味する免疫の世界。それと比べたら、人間の世界なんてずっとましじゃないか。


陳佳奈 (ちん・かな)

日本で医師免許を取得後、本格的にモデル活動を始める。現在ニューヨーク在住。
好奇心の赴くまま色々なことに挑戦しながら、アンチエイジングと予防医学について学び、広めていくのが目標。
オフィシャルブログ「model, doctor & new york
所属事務所「OKAZAKI MODELS」ホームページ